「生活を愉しむ」ための移住おすすめ度
★★★★☆
本書は、家族5人でオーストラリアに移住した著者と家族の、定住時期における生活上のエピソードを中心としたものである。そこには、移住者として直面する様々な問題から、オーストラリア社会の一面を明らかにしている。
著者の「移住決断」は、日本でもコピーライターとして十分に生活できていたが、過酷な労働環境から、家族との時間がとれず、収入は多くとも、「生活を愉しむ」ことができなかったためである。そこで、英語圏、時差がほとんどない、妻が英語に堪能などの理由からオーストラリアを選択したという。
このため、本書の記述は、オーストラリアのいい面・悪い面はあるにせよ、「生活を愉しむ」という所期の目的はほぼ達成できたということからも、それらをあるがままに受け入れ、自分なりに解釈し、位置づけていくというものである。また、さすがにコピーライターだけあり、記述には皮肉も効いており、痛快である。
この意味において、本書は、グローバル時代の移住のあり方として、母国でも十分に生活していける者が、さらなるライフチャンスや「よい生活」を求めて移住するということを示すものである。著者はこの点を別のところで「移民第三世代」と位置づけているが、極めて正鵠を得ていると言えよう。
すなわち、日本とオーストラリアという、オール・オア・ナッシングの選択ではなく、著者が述べるように「好きな国が二つある。なんて贅沢なことだろう。」(250頁)ということだ。事実、著者の生業を見ても、日本人がオーストラリアに行くことにより、現地の情報を日本語で生産することということからも、まさしく日本人性とオーストラリアでの居住という事実を最大活用しているといえよう。
以上本書は、グローバル時代の「生活を愉しむための移住」を提案し、また、オーストラリア社会の等身大の姿を伝えた、良書といえるだろう。
すばらしい移住物語おすすめ度
★★★★★
色々な困難を克服して前向きにがんばっている様子は、すごく元気を与えてもらえて、作者に感謝しています。
今の日本は、働き盛りの30〜50台の男性の自殺率がすごく高く(日本は交通事故死者数が年間一万人に対して、自殺者は年間3万人の国です)、移住した本人がオーストラリアに来ることによって自殺したくなる雰囲気に陥るか?というと全く逆のような気がします。
税金に関しても、日本では税金以外の項目になっている年金や健康保険、雇用保険などはオーストラリアでは税金に含まれています。また、日本の住民税はこちらでは所有者が支払うわけで、オーストラリアの方がより受益者負担の公平性があると思います。さらに、課税率も、オーストラリアの最高は47%。日本は65%です。これは日桊¬!は共産主義以上に働く意欲(成功する意欲)を殺ぐ精度であるといえます。さらには、「見えない税金」が日本では恐ろしく高く(高速道路代や公共料金などの物価が)生活感覚としての圧迫感はオーストラリアの比ではありません。
また、相対的可処分所得は平均でもオーストラリアの方が高いことは、オーストラリアが住みやすい国であることを物語っていると思います。著者は、為替の利点を指摘されて、オーストラリアに居ながらにして日本円を稼ぐ実例を示したわけで、これからのネット社会での生きる道としての素晴らしいサンプルだと言えます。これは、「みんなが作家になってオーストラリアで暮らしながら日本円を稼ぐ」のが良いと言っているのではなく、一つの例として読者に多くのヒントを与えることになると思います。
日本は規則ばかりで、失業率の数値も、日本とアメリカやオーストラリアでは全く違うため、比較はできません。また、「社内失業」も含めると、真の失業率は日本はとっくに10%を超えていると思います。日本は自分の頭で判断しない人が多く(その訓練もできていないし、教育もされていないので)、マニュアル通りにはちゃんとできるけど、自己裁量の範囲が極端に狭いように思います。
それらの点を日本でサラリーマンをやっていた著者が、オーストラリアで実際に生活して色々とご自身で考え、行動する姿は、日本に生活する人に相対比較と言う意味で、多くのヒントや勇気を与えてくれるものだと思います。もう何度も読み返して、勇気を与えてもらっています。
概要
小学一年生を筆頭に3人の子連れでブリスベンに移住。そこから一家5人のアタフタドタバタ劇が始まった。日本とはまったく違う尺度で生きる人々の中に裸一貫で飛び込んだ最初の一年の当惑や驚き、そして感謝の気持ちをありのままに綴った体験記からは、住んでみなくちゃわからないオーストラリアの“ホント”がみえてくる。著者ならずとも、いつしか「愉快な国」オーストラリアのトリコになる一冊。
内容(「BOOK」データベースより)
外資系広告代理店でコピーライターとして勤務していた筆者は、1999年6月、オーストラリアのブリスベンに家族で移住を果たした。住む家も、就職先もない「住所未定、ほとんど無色」から始まる1年間。
内容(「MARC」データベースより)
しゃべり通しの運転免許試験、プールをひっくり返したような嵐、黒いサングラス姿の幼稚園児…。人生は、愉しむためにある! 家族でオーストラリアに移住した著者が、一年間の生活と体験を綴る。
著者 柳沢有紀夫
こんな人生もある「出世よりも残業代よりも、自分と家族の時間が欲しい」。そう考え、外資系広告代理店でのコピーライターの職を投げ打って、オーストラリアに移住。物書き生活に突入しました。仕事はなかなか増えないが、アハハとトホホには事欠かない日々。元気のない今のニッポン、特に不況とリストラにおびえるサラリーマンとその家族に、ハチャメチャな笑いをお届けしたいと思います。「なんだ、こんな生きかたもあったのか」と思っていただければ幸いです。
著者について
1964年生まれ。慶応大学文学部卒業後、外資系広告代理店でコピーライターとして勤務。1999年6月、オーストラリアのブリスベンに移住。現在はフリーランスとして、雑誌等にコラム、エッセイを寄稿。そのかたわら、アート・コーディネーターや海外在住のライターの交流会である「海外書き人クラブ」の発起人および世話人もつとめている。ブリスベン在住。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
柳沢 有紀夫
1964年生まれ。慶応大学文学部卒業後、外資系広告代理店でコピーライターとして勤務。1999年6月、オーストラリアのブリスベンに移住。現在はフリーランスとして、雑誌等にコラム、エッセイを寄稿。そのかたわら、アート・コーディネーターや海外在住のライターの交流会である「海外書き人クラブ」の発起人および世話人もつとめている。ブリスベン在住