反省文。おすすめ度
★★★★☆
その名の通り、
今まで何度となくハワイに訪れたり、
限られた情報を得ただけでハワイのイメージを作り上げてきた日本人、
又は他の外国人でさえ見ようとしなかったハワイの姿を少しでも深く知るためにしたためた反省文。
作品自体はチリの時のとはまた違う感覚で作られている。
それは当然のことであって、何だかんだ山口智子らしさに満ちていると思う。 今回のはただ知ることに重点を置き、勉強しながら、
今まで見過ごしていたことに対して疑問を投げかけ、
ただそこから何かを掴みとろうと模索している山口智子の存在が伺える。
私は本の世界にはほとんど無知で批評とか解らないけれど、
この本を読んで自分自身の物事の捉え方はどうかを考える良いきっかけになりました。
そして山口智子さんをまた違う角度から知る良い機会になりました。
文字通り反省おすすめ度
★★★★☆
山口智子という人はあまり役者以外の活動をされない方なので、評者は「ロング・ヴァケイション」や「居酒屋ゆうれい」に出ていたというくらいの印象しか無い。あとは唐沢利明の奥さんというくらいか。
さてそんな著者が、ワイキキの外のハワイを見聞して回った素直な感想をしたためたのが本書である。特に焦点になっているのはハワイの伝統文化、すなわちフラや航海カヌーやタロ栽培や先住民の歴史で、所々に事実誤認も見られるが(例えばホクレアの1976年の航海と1980年の航海を混同していたり)、文章書きを商売としていない人が書いた点を割り引けば、よく頑張ったと言って良い出来である。
本書の見所は、あまり心の準備をせずにいきなりディープなハワイに飛び込んで行く著者のドキドキ感がくっきりと描写されているあたりになろう。航海カヌー「マカリイ」のリーダーであるクレイ・バートルマンに会いに行った話など、一応は日本を代表する女優の一人であるはずの著者がクレイの迫力に圧倒されて小さくなっている様子が伝わってきて、微笑ましい。同様の心境はタロ畑やヘイアウやヴォルケイノを訪れた場面でも見られるが、ハワイの奥深さを畏怖しつつ、それを理解しようという著者の息づかいが感じられて、大変に好感を持てる。似たようなコンセプトの本に池澤夏樹の『ハワイイ紀行』があるが、自分の立場をもきっちりと総括し、「反省」する視点が加わっているという点で、著者は池澤より一歩先に行っていると思える。
惜しむらくはやや先住ハワイ人の文化に焦点を集め過ぎて、ハワイの近代化、あるいは現代のハワイという視点が抜け落ちてしまったという所だが、そこまで手を広げたら、この数倍の分量になっていたであろうし、そこは今後の著者の活動に期待したい。
著者は最終的にクレイの話から発展させて、伝統航海術が高度産業化社会の持つ矛盾や危機を回避する為のオルタナティブな思考を生み出しうるのではないかと語って本書を結んでいるが、これは伝統航海術復興の立て役者であったナイノア・トンプソンの自伝「ホクレア号が行く」においてよりわかりやすく語られているので、出来ればそちらも併読してみると、著者の考えがより深く理解できると思われる。
概要
サーフィンもリゾート・ホテルもショッピング街もなくたって、ハワイの旅には、もうひとつの道がある。本当のハワイに出会いたい…。そう願い続けた女優・山口智子が綴った、ハワイへの恋文。