何といっても国際交渉の難しいところは全体像をつかむのがとても大変なところであろう。また、以前までの交渉過程や各国の情勢も絡むので大変難しい。この本では、序章に地球環境関連の国際交渉の流れをコンパクトにまとめてある。そして、全体の交渉像を描きつつも京都議定書作成過程で大きな役割を果たしたオランダの国内政策と国際外交の結びつきについて描かれている。
地球環境外交の仕組みが明確化おすすめ度
★★★★☆
国際交渉というものはとても複雑になる傾向になる。だから、国際交渉のメカニズムを理解するのは大変難しい。その一つの理由は、国際交渉が常に前の国際交渉を引きずっているからだと思う。だから、この本の序章では地球環境交渉の歴史をコンパクトに分かりやすい形で提示してくれている。また、オランダというとっても小さい国であったが京都議定書作成で大きな役割を果たした国を例にあげ、国内政策と外交が密接に関わりあっていることを示していた。そして、全体の動きというものも見事にまとめてあって、国際交渉の難しいとされるポイントが非常に丁寧に描かれている。
概要
本書で取り上げる京都議定書採択に至るまでの交渉過程でリーダーシップを発揮していたのはオランダであり、オランダに率いられる欧州連合(EU)であった。京都会議では締約国の一つとしてリーダーシップを発揮したオランダであったが、そのオランダがボン会議では、今度は締約国会議の議長国として、またしても多国間合意形成へ向けたリーダーシップを発揮したのである。なぜこうもオランダが目立つのであろうか。その謎が、本書を通じて明かされる。
内容(「MARC」データベースより)
京都議定書の命運を握る二つの重要な会議において、リーダーシップを発揮していたオランダ。その答えは、その国の国内政策・制度の中に見出される。多国間交渉におけるリーダーシップにつながっていくメカニズムを解き明かす。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
蟹江 憲史
北九州市立大学法学部助教授。1969年生まれ。2000年、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。国際連合大学高等研究所勤務、北九州市立大学法学部講師を経て、2001年より現職。国際連合大学「環境と持続可能な開発」コンサルタント。専攻は国際関係論、環境政治学